2013年2月27日(水)都議会本会議一般質問
都議会民主党 山下ようこ

それでは私、山下ようこが一般質問をさせていただきます。

環境の世紀と呼ばれる21世紀も、12年が経過しました。東京都では、その最初の年、2001年に屋上緑化の義務化が始まり、2010年には、世界初となる都市型キャップ・アンド・トレードがスタートするなど、世界に冠たる環境都市の確立のためのダイナミックな施策が展開されています。

全世界的、地球規模の課題である気候変動対策に着目しますと、温室効果ガス排出量について、国は2020年までに、1990年比で25パーセント削減するという目標を2009年以来、掲げていましたが、このほどこの削減目標を今年11月、の国連気候変動枠組条約締約国会議、COP19までに見直すと表明。東日本大震災以来、エネルギー政策が社会全体でクローズ・アップされるのに伴い、温室効果ガスの削減にかける強い意志が前面に押し出されることが少なくなったと感じます。

こうした中、東京都は「2020年までに2000年比で25パーセント削減」という目標を、今年1月に策定した「2020年の東京へのアクションプログラム」においても堅持し、そのための事業をおこなうとしています。首都・東京が目標を高く掲げ、率先して、実効性のある対策に取り組み、成果を上げていく。これは極めて大きな意義を持つことと考えます。そこで改めて、都の気候変動対策のこれまでの成果と今後の取り組みについて伺います。

温室効果ガスの削減のためには、排出量の削減だけでなく、植物の光合成による二酸化炭素吸収の働きも強化しなければなりません。
東京独自の指標、みどり率は、この数年間の推移を見ますと、23区では横ばい、多摩地区では減少傾向となっています。緑を守り、さらに増やす。東京都が昨年、緑施策の方向性を示す「緑施策の新展開」をまとめたのは適切であったと言えるでしょう。都の緑施策のこれまでの成果と今後の取り組みについて伺います。

23区でみどり率が横ばい、すなわち、都市部の緑地の減少に歯止めがかかっているのは、東京都の緑施策の成果、つまり、都が積極的に緑化を推進しているからこそ、と言えます。
東京では昨年秋、緑と花の国内最大級の祭典、全国都市緑化フェアが開催されました。
東京での開催は28年ぶりのことです。
私は、今からちょうど2年前の都議会本会議の一般質問の場で、この催しが、人間と植物との共存共栄の素晴らしさを多くの人に知らせる大きな可能性を秘めたものであるとの認識を述べた上で、いわゆる一過性のイベントではなく、21世紀を生きる人々に、緑あふれるライフスタイルを提案できるものとするよう要望しつつ、この緑化フェア開催の基本的な考え方を伺いました。

今回のフェアは、1ヶ月間の開催期間中、入場者が500万人を超え、まさに大盛況と言える緑と花の祭典になりました。
このフェアを契機として、都民の緑化意識のさらなる高揚を図り、21世紀にふさわしい美しいまち・東京の創造を加速していきたいものと思います。
そこで、今回の緑化フェアの成果について、都は主催者として、どのように認識しているのかを伺います。

一方、郊外では、農地の減少がみどり率の低下をもたらし、すなわち農業振興が緑を守り、育てることにつながると言えます。
小規模経営がほとんどの東京の生産者。その経営を支えていくためには、魅力ある新品種の育成、ブランド化が非常に重要なポイントであり、東京都農林総合研究センターの研究者の力に期待するところであります。

今から2ヶ月余り前の東京都知事選挙。猪瀬新知事誕生が確実になった際、猪瀬知事は、青いバラの花束を抱えて登場し、この花は「不可能を可能にする」という意味を持つ、と語りました。
研究者の長い年月をかけての努力の結晶、青いバラ。不可能と思われていたのに、ついに開発に成功した青いバラ。私自身、学生時代は花卉園芸学を専攻し、花の色素をテーマに研究していただけに、この青いバラ育成に取り組む企業の研究には当初から注目しており、今回、猪瀬知事が、このバラを記念すべき瞬間を彩る演出としてセレクトしたことに驚き、そして感動しました。
研究者には、新品種にかける夢があります。そして、この夢の力は、一般の人々の暮らしを豊かにすることもできるます。
1990年代のガーデニングブームは、茎が垂れ下がるペチュニアの改良種の誕生によって巻き起こったとも言われます。たった1つの植物の誕生が、人々のライフスタイルに変化をもたらすこともできる。それを実証する事例です。

2020年東京オリンピック・パラリンピック招致の合い言葉「今、ニッポンには、この夢の力が必要だ。」これは、そのまま新品種育成の分野にも当てはまると考えます。

東京で開発された花、野菜、果物。東京ブランドは人々の暮らしや食卓を豊かにし、同時に東京に住まう喜びや誇りをも生み出します。

東京都農林総合研究センターでの新品種育成の取り組みについて伺います。

また、農業振興のためには、高品質のものを低コストで栽培する技術の確立も重要です。その研究も、農林総合研究センターの役割の柱と言えましょう。栽培技術開発の現状を伺います。

さて、私は一貫して、東京のオフィスビルの建物内の緑化、すなわち室内緑化を進めるべきと訴えております。
その目的は、大きく4つ。
1つ目、東京で働くおよそ七百万人の職場環境の向上と健康維持、2つ目、ビルから外に、強制換気によって排出される空気による大気汚染の防止と温室効果ガス・二酸化炭素の削減、3つ目、ヒートアイランド現象の緩和、4つ目、観葉植物や苗木、シクラメンなどの鉢花といった室内で育てる植物の需要拡大による農業振興。農業振興は、当然、農地・緑地の保全につながり、環境保全の効果が生まれるのは言うまでもありません。

植物には蒸散作用による夏の気温低下と冬の乾燥の緩和、光合成による二酸化炭素吸収、酸素放出。空気中のホルムアルデヒドやトルエンといった揮発性有機化合物・VOCの吸収、分解による無毒化、これはNASA・アメリカ航空宇宙局の実験などによって立証されています。そして、いわゆる癒しという精神的効果。
植物には、これら複合的な力があります。
生命を持つ植物だからこそ、同じ生きるものとして、人間との命の絆を育むこともできます。

オフィスビル内のパソコン、プリンターなどのOA機器からは、VOCが発生しており、その空気は換気によって外に排出されています。
たとえば、ここ東京都庁。第一庁舎、第二庁舎の事務フロアーの容積を図面によって私自身が計算しましたところ、およそ五十万立米となりました。
一方、執務室の二酸化炭素濃度は1,000PPM以下に保つことが法律で義務付けられているため、この都庁では1日2回の強制換気、つまり空気の総入れ替えをおこなっています。
ということは、都庁の職員の皆さんが呼吸によって吐き出す二酸化炭素やOA機器などから発生するVOCを含んだ空気が、1日100万立米も、大気に放出されていること計算です。

これと同様のことが、各ビルでおこなわれているというわけです。
この実態を認識し、高層ビルが林立する、この首都東京から室内緑化を推進すべきと考えます。

私は、この室内緑化について、今から3年余り前の2009年12月の都議会本会議の一般質問のこの場で、その必要性を述べさせていただきました。
そのとき、私は室内緑化の都の基本的認識について質問し、当時の有留武司・環境局長は「緑は、美しく風格のある都市景観の創出に加えて、そこに住む人々の心にゆとりやくつろぎを与えるなど、その役割は多様かつ重要である。オフィス空間などの室内緑化についても、都民に潤いや安らぎを与えるとともに、身の回りにある緑を大切に守りたいと思う心をはぐくむなど、さまざまな効果があるものと認識している。」と、ご答弁くださいました。

一般の事業所では、景気低迷の影響も受け、室内緑化縮小の傾向が指摘される昨今ですが、この都庁内では、税収が減少する中でも室内緑化は堅実に推移し、このうち、病院経営本部では、都立病院内部の緑化面積が拡大、また、昨年の全国都市緑化フェアでは、室内緑化されたビルの写真が出展団体によって掲示されるなど、3年前の質疑以来、室内緑化推進の動きが見られます。

このような着実な前進は、都庁各局の高い見識の表れであると拝察いたします。心より敬意を表させていただきますとともに、都内の職場環境の改善のために、また観葉植物の産地・八丈島や苗木、鉢花を栽培する多摩地区はもちろんのこと、都内の室内緑化の推進に熱い期待を寄せる全国の植物生産者の支援のために、そしてかけがえのない地球のために、この室内緑化を都民にさらに広めていくような施策展開を望みます。

緑豊かな東京。屋外も建物内も緑化された品格ある都市、東京は、世界からの観光客、とりわけ東京オリンピック・パラリンピックが実現した際、東京を訪れる世界中の人々へのおもてなしにもなるはずです。

環境の世紀、そして都市の世紀。ここで、緑あふれる東京を実現する猪瀬直樹知事の決意を伺い、私の質問の結びとさせていただきます。

ありがとうございました。


猪瀬直樹 東京都知事の答弁

 山下ようこ議員の一般質問にお答えします。 山下議員は、園芸が専門なのでお詳しいですが、青いバラというのは、ヨーロッパで長年かけて栽培技術をやってもできなかった。オレンジや黄色など、いろんな色はできるんだけれども、青だけはできなかった。それが日本のバイオ技術で青いバラをつくることができたということですね。
緑あふれる東京を実現する取り組みについてでありますが、東京は、江戸時代からずっと世界有数の緑豊かな都市で、大名庭園があり、そして今は六義園とかそういう形で残っているわけですが、また、一般の庶民の方々も、軒先で緑をはぐくむ文化を引き継いでいまして、そういう中で、ジョギングをしたりしますと、ついその緑のある並木に沿って走っている自分を発見することがあります。
 そこで「二〇二〇年の東京」の中で、水と緑の回廊で包まれた美しいまち東京を復活させる、これ意識的にやらないと、確かに緑はどんどん減っていくのです。ですから、意識的に目標をつくって、平成二十八年までに、サッカー場一千五百面に相当する緑を創出するとともに、街路樹を百万本に倍増するなど、あらゆる都市空間において緑化を推進していきます。
平成十九年に開始した緑の東京募金は、昨年六月に目標額八億円に達しまして、街路樹に寄付した人のメッセージをつける、名前をつけるんですね。それは、マイツリーといいますが、その成果で今も続いています。校庭の芝生化も、その募金を活用してやっています。
 今後も、東京湾に皇居の広さに匹敵する緑の島を出現させる海の森----皇居はだいたい百ヘクタール、海の森も九十ヘクタールですから、だいたい同じぐらいの大きさの緑の空間がそこに生まれます。ロンドンでのオリンピックのプレゼンも、緑が多いんだよ、ということをやりましたし、三月初旬の今度のIOCのプレゼンでも、緑の回廊をつくるということをプレゼンでやっています。そういうことで、二〇二〇年オリンピック・パラリンピック競技大会の開催地にふさわしい、豊かな緑あふれる洗練された環境都市東京を実現していきたいと、こういうふうに思っています。
 なお、その他の質問については、東京都技監及び関係局長から答弁いたします。

村尾公一 東京都技監の答弁  
 第二十九回全国都市緑化フェアTOKYOについてでございますが、上野恩賜公園や井の頭恩賜公園など、メイン六会場及び区市の公園などから成るサテライト会場におきまして、民間企業など延べ五百五十団体に上る出展、協賛により五感を通じて楽しむ庭園群など、新たな緑との触れ合いを提案し、緑化意識の高揚につながるフェアを開催いたしました。
 また、延べ二千八百名に及ぶボランティアスタッフが、会場案内や草花の管理などに参加し、きめ細かな会場運営が行われ、フェア閉幕後も、ボランティアの一部が引き続き公園内の花壇管理を行うなど、緑化活動を継続する人材の育成も図られました。  これら取り組みの結果、目標入場者数五百万人を超える五百十六万人もの方々にご来場いただき、フェアを成功裏に終えることができたと考えております。

大野輝之 東京都環境局長の答弁  
 二点のご質問でございます。  まず、都の気候変動対策についてでございますが、都はこれまで、最先端の低炭素都市の実現に向けまして、大規模事業所への総量削減義務制度、中小規模事業所への地球温暖化対策報告書制度、また、太陽エネルギー利用機器への創意的な普及策など、さまざまな対策を展開してまいりました。  この結果、たとえば、大規模事業所の昨年度のCO2排出量は、平均で二三%の大幅減となり、住宅用太陽光発電につきましては、都の補助制度開始前に比べて導入速度が十倍以上になるなど、大きな成果を上げております。
 今後とも、都は「二〇二〇年の東京」で掲げました低炭素都市実現を目指して、実効性のあるさまざまな対策を進めてまいります。
 次に、緑施策の成果と今後の取り組みについてでございますが、都はこれまでも、海の森や都市公園の整備、街路樹の倍増、皇帝芝生化など、新たな緑の創出に取り組む一方で、自然保護条例に基づく開発許可制度では、緑化計画書制度を通じて、開発行為にあわせた緑の確保と創出を図ってまいりました。
 今後は、これまでの緑の量を確保する取り組みに加えまして、生物多様性の保全など、緑の質を高める視点も重視して、緑の量と質をともに確保できるよう緑施策を推進してまいります。

中西充 東京都産業労働局長の答弁
 二点のご質問にお答えいたします。  
まず、花や野菜などの新品種開発の取り組みについてでございます。
 東京都農林総合研究センターでは、東京の気候風土に適し、市場競争力や収益性が高く、地域の新たな特産品になるような品種開発に努めております。  これまで、果物では、大粒で甘い種なしブドウの高尾や、甘くて色鮮やかなカキでございます東京紅、花では、香りのあるシクラメン、野菜では病害に強いコマツナやウドなどを開発いたしまして、農家に普及してまいりました。
 現在は、温暖な気候でも栽培が容易なトルコギキョウや、果肉が黄色で甘みの強いキウイフルーツでございます東京ゴールドを品種登録出願中でございます。
 次に、栽培技術開発の現状についてでございます。東京都農林総合研究センターでは、これまで、コマツナなどについて、収益性を高めるため、防虫ネットや紫外線カットフィルムなど、新しい資材を効果的に組み合わせた病害虫防除技術を開発し、既に広く実用化されております。また、ナシやブドウでは、根や枝の生育を制御することにより、果実の糖度や収量に加え、作業効率も高める栽培法の確立に向け、現在、実証実験を行っております。さらに、花のハウス栽培において、燃料費を削減するため、夜間の暖房時間を最小限に抑える栽培管理方法の開発などにも取り組んでおります。
 今後とも、農家のコスト削減につながる生産技術の開発を進め、農業振興に寄与してまいります。